2022年10月のブログ記事一覧Blog
運動器機能解剖学研究所での研修
2022.10.30
こんにちは。理学療法士の椿です。
先日の10月26日、27日に、岐阜県にある運動器機能解剖学研究所という研修施設に当院のPTと二人で行ってきました。念願の研究所訪問です。
「岐阜」という地名はあの織田信長公が命名したことをご存じでしょうか。岐阜駅前には巨大な黄金の織田信長像が設置されており、夜はなんとも綺麗にライトアップされていました。
さて、今回の研修のテーマは1日目が「足関節・足部に対する機能解剖学的運動療法」、2日目が「クリニカルインソール療法」で、講師は研究所の林典雄先生と岸田敏嗣先生でした。足関節と足部は骨折や捻挫(靭帯損傷)をはじめ、足底腱膜炎やシンスプリントなど日常生活動作や仕事、スポーツなどにより本当に多くの障害が起こります。
今回の研修で、患者さまが痛みを訴えている部位にはどのような組織(骨・筋肉・靭帯・神経・脂肪など)が存在するのか、足関節・足部の痛みの原因となっているアライメント(姿勢)や動作は何なのかを解剖学、運動学を中心にしっかりと考え的確に治療できるようにもっと勉強しなければと思いました。また、2日目のインソール(靴の中敷き)の研修では2人ペアで実際に一からインソールを作成し、歩きやすさを実感することもできました。
実際に足部のトラブルで困っている患者さまにインソールを提供できるまではまだまだ修行が必要です。今回学んだ内容を院内スタッフで共有し日々研鑽して参ります! 朝晩は寒くなってきましたね。お身体に気をつけてお過ごしください。
痛みの原因 モヤモヤ血管治療
2022.10.25
こんにちは、院長の筒井です。
今回は「痛み」の新しい治療法についての話です。
10/22に東京の表参道にあるオクノクリニックに病院見学に行ってきました。オクノクリニックの奥野祐次先生が開発したモヤモヤ血管治療について治療手技を研修させてもらいにいきました。
モヤモヤ血管治療とはなかなか聞きなじみのない言葉だと思います。実際、私自身もこの治療法を知ったのは最近です。
この治療自体、奥野先生が開発され治療として使用できるようになってまだ数年程度であり、どこの病院でも自由に行えるものではなく、オクノクリニックとライセンス契約を行っている病院でしか治療を行えません。先日ブログにも記載した、超音波学会で奥野先生が発表されていたのを聞き、この治療法は今まで治療できなかった患者様の症状を治療できる武器になると思いすぐに契約し、病院見学を受け入れて頂きました。
病院見学では治療方法や細かい注意点などを知ることができましたし、それ以上に来院される患者様の声を直接聞くことが出来たのはとても貴重な経験でした。整形外科的にもなかなか痛みをとることが出来ず悩むことが多い、へバーデン結節(指の第1関節部の変形)や足底腱膜炎、CM関節症、五十肩、肩こりなど多くの症例で症状が緩和したと患者様の喜んでいる姿を拝見出来、この治療法は素晴らしいもので当院でも行っていこうと改めて思いました。
さてこの治療法についての話です。
整形外科は上記にも記載した疾患や腰痛、関節痛などの痛みに関わり、色んな痛みに対して状態にあった治療を提供しています。しかし「痛み」の根本はそこに痛みを伝える神経があるからです。例えば捻挫をしたとして、その部分の靭帯が傷んで出血するためにはれると思いますし痛くて足をつくのも大変になると思います。足をつけないほどの痛みは靭帯が傷んで痛いわけではなく、靭帯を損傷することで靭帯の周りにある痛みを伝える神経にも刺激が入るために痛いと感じるわけです。その証拠に靭帯が切れたことが痛いのならば、靭帯を修復しないと一生痛いはずですが靭帯が切れたままでも普通に痛みなく生活している人はたくさんいます。その人達はある程度修復されて、神経への刺激が減ったためと思われます。
そのように完全に修復しなくても、神経への刺激がなくなり、痛みがなくなれば良いのですが、今回の本題の『モヤモヤ血管』が出来てしまい、痛みが続くことがあります。組織の損傷部位には体が修復しようとして異常に毛細血管(モヤモヤ血管)が増えます。下記の画像は足底腱膜炎の症例に造影剤を使用して、血管を確認している様子ですが、三角のマークがある踵の部分にもやもやとした異常な血管が出来ているのがわかります。(オクノクリニックホームページより引用)
そして人体のルールとして血管が増えるとそれと一緒に伴走して神経も増えます。しかしこの新しく増えた毛細血管は元々存在している血管とは違い即席的に作られたもののために脆弱であり、そのため痛み物質(炎症性サイトカインなど)が放出され、一緒にできてしまった神経に刺激が入りいつまでも痛みが続くことがあるというメカニズムです。高齢になればなるほどこのように異常な血管が出来やすいため、年をとると治りが遅いというのはこのようなことも原因かもしれません。もちろん全部のけががこのようになるわけではなく、捻挫などは初期の治療でしっかり固定し、損傷部位が治りやすい環境を整えてあげれば大丈夫ですが、なにもせずほったらかしておくと体は修復しようとしながらも、日常的な負担で損傷が繰り返され、その間にモヤモヤ血管が出来ていまい、痛みがひかないということになるのだと思います。
さて前置きがかなり長くなってしまいましたが、モヤモヤ血管の治療法はこの異常な血管を詰めてしまうというものです。モヤモヤ血管ができている部位よりも上流の動脈から塞栓物質(抗生剤)を投与します。そうするとその部分よりも末梢にある血管は一時的に詰まります。正常な血管では詰まった粒子はすぐに溶けて開通しますが、モヤモヤ血管は脆弱であるために開通させる力も弱く、詰まったままの状態になるのです。そうすることでモヤモヤ血管がなくなり、痛みが緩和されるということです。
下記の画像は手の痛みに対しての治療風景です。手よりも上流の動脈の血管に管を留置し、薬を投与することで、末梢である指などにながれていきます。
血管を詰めると聞くと少し怖いと思われるかもしれませんが、重大な副作用や合併症が起きず、安全性の確立されていることは奥野先生が研究や数多くの症例で発表されています。詳しくはオクノクリニックのホームページ(https://okuno-y-clinic.com/)に論文なども載せられているので確認してみて下さい。
オクノクリニックではカテーテルを使用した全身的に疼痛のある部位を造影剤で確認してピンポイントでモヤモヤ血管を詰めるという治療もされていますが、今回ライセンス契約で当院で行えるようになった治療は手、足、肘といった末梢の部分のモヤモヤ血管に対して行える動注治療になります。実際の治療動画などもオクノクリニックのホームページで動画紹介(https://okuno-y-clinic.com/movie)されていますのでご覧になるとイメージしやすいかもしれません。
すべての痛みがこれで解決するわけではありませんが、私としては少しでも今まで改善しなかった痛みに対抗できる手段が増え、それによって苦しんでいる患者様に良い医療を提供できれば幸いと思い、今後の診療に取り入れていこうと思います。