四十肩・五十肩の新しい治療法
2021.12.12
こんにちは、院長の筒井です。
最近四十肩、五十肩と言われる肩関節周囲炎の患者様が多く来院され、「長年挙がらなかった肩が挙がるようになって良かった」と治療に満足してくださる方が増えているように思います。自分も日々研鑽を積み少しでもより良い治療を行えればと思い努力しているところです。
そこで今回は『サイレントマニピュレーション』という新しい治療法とそれによって整形外科的にも積極的な治療を行うようになってきている四十肩、五十肩への現状について書いてみようと思います。
多くの患者様が長い間肩の痛みを抱えながらも受診せず我慢して我慢してから治らず受診されます。話を聞くと五十肩と考えて自然と治ると聞いていたので我慢していたとのこと。確かに自然と治ることもある疾患であることは事実です。しかし治るにしても1カ月で治る人もいれば、半年かかる人もおり、場合によっては数年たってやっと治ったという人もいます。そして場合によっては我慢し続けても治らないという人もいます。
なぜ、このような現状になってしまっているかというと、今までの治療法として痛みに対して鎮痛薬や湿布などの保存的な対症療法で自然寛解を待つか手術的な治療法しか選択枝がなく、患者様も自然に治る可能性があるのなら保存的に経過をみてみるとなってしまっていたからです。
しかし、最近この病気の病態が解明されてきており、それにより手術ではない積極的な保存的治療の一つとしてサイレントマニピュレーションが開発されました。どのような治療法かというと、簡単にいうと炎症を起こして硬くなって伸びなくなってしまった関節包を手術をせずに外的に力を加えて切るといういうものです。
肩の関節の中には以下の図の様に関節包という組織があり、これがあるために肩関節は脱臼せずに十分な可動域を保つことができます。しかし、なんらかのきっかけでこの関節包に炎症が起こり、そのため痛くて寝れない、動かせないという時期が発生し、痛みが少し落ち着いた時には、関節包が拘縮を起こして腕が挙がらないという状態になってしまいます。
この拘縮を起こしてしまった状態に対して行うのがサイレントマニピュレーションです。先ほど述べたように外的に力を加えて切るのですが、ただでさえ動かすのが痛い部位に力を加えては痛いだろうと思われると思います。そのために術前にブロック麻酔をかけ、肩の部分の痛みを感じない状態にしてから行います。麻酔が十分にかかった後は徒手的に関節の可動域を広げていき、それに伴って関節包が徐々に伸びていきピリピリと少しずつ切れていきます。そうして全方向的に切離出来れば関節可動域は格段に改善します。その後は理学療法士によるリハビリが大事で、再度固まらないようにすることと、更なる関節可動閾の拡大を目指して行っていきます。
もちろんこの治療にも合併症やリスクなどはあり、適応患者選択や治療時は慎重に行いますが、この治療法により得られるメリットは多く、私自身この治療法を習得して治療できる幅はかなり広がり、入院せずに外来で行うことが出来るとても良い治療法だと思います。
自然と治るかもしれない四十肩・五十肩ですが、いつ治るかも分からず、治らないかもしれない、治ったとしても半年以上我慢しなければいけないのであれば、早期から積極的に治療していく方が良いのではないかと考えます。
様々な治療法がありますし、五十肩と思っていても違う疾患の可能性もありますので、自己判断で放置せずに一度近くの整形外科を受診することをお勧めします。