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肩があがらない四十肩・五十肩に サイレントマニピュレーション

2022.03.26

こんにちは、院長の筒井です。

最近サイレントマニピュレーションの治療法を知って、当院を受診される方が少しずつ増えてきています。この治療法が患者様の悩みや苦しみを解決出来る良い治療法であるため、私も積極的に勧めている所です。五十肩(=四十肩)だからと諦めて、治療せずに放って置いている患者様の一助になればと思い、再度この治療法について詳しく書いてみようと思います。


サイレントマニピュレーションとは「非観血的肩関節授動術」のことです。『観血的』とはメスなどで皮膚を切るなどの出血を伴う処置のことであり、『非観血的』なのでそういった外科的処置はしませんという意味です。また『授動術』とは動かなくなったものを動きやすくすることを言います。簡単に言うと手術をせずに固まった肩の可動閾を良くする処置ということです。外来で出来るため入院がいりません。


まずは簡単に五十肩についてですが、五十肩は肩関節の最も内側の『関節包』と言われる袋の部分で炎症が起こることから始まります。(下記の図参照)

正常な肩関節

この炎症期は、肩が痛くて少し動かすだけでも激痛が走り、夜も寝られないような疼痛を引き起こすします。その炎症期が終わると、凍結期といわれる肩が硬くなる時期に移行し、この時期は痛みは落ち着くのですが、肩が上がらないといった可動閾制限が出現します。これは正常では伸び縮みする関節包が炎症によって硬くなってしまったためです。その後解凍期といわれる硬くなった関節包が緩んでくる時期に移行し、肩が元のように動かせるようになります。これが五十肩の経過になります。

この経過で早めに自然と治る方は良かったですむのですが、なかには治らない症例があります。いつまで経っても肩が上がらない、また治るにしても1年や2年とかかることもあります。そんな痛みや肩があがらないといった症状に対して行うのがサイレントマニピュレーションになります。

サイレントマニピュレーションは五十肩で硬くなった関節包を医師が徒手的に伸ばしながら切ることで可動閾を広げる方法です。以下その手順と治療の流れです。

①ブロック注射

硬まった肩を動かすので痛みが無いようにするのと、筋肉を緩ます目的で処置前にエコーを使用し、頸部の神経に麻酔を行います。約6~8時間程度、腕が動かせなくなります。

エコー下で頸部に麻酔

②サイレントマニピュレーション

麻酔が効いたのを確認後、固まった肩関節を動かしていき、縮んだ関節包を剥いでいきます。プチプチと音がしますが、麻酔がかかっているため痛みはありません。施行後は三角巾にて腕を吊り下げた状態で帰宅してもらいます。

サイレントマニピュレーション施行01

③翌日よりリハビリテーション施行

サイレントマニピュレーション処置後は、リハビリがとても重要であり、当院では理学療法士による運動器リハビリを行っています。それによって更に関節可動域の改善と再拘縮予防を行います。

治療費は医療保険が適応されて3割負担の方で約6000円程度(初・再診料、リハビリテーション料は別途)です。

以上が四十肩・五十肩とサイレントマニピュレーションの説明になります。

サイレントマニピュレーションは比較的新しい治療法の一つであり、以前は対応できなかった五十肩も改善できるようになってきています。また五十肩の治療もサイレントマニピュレーションが全てではないので、肩の症状で悩まれている方は近くの整形外科に相談されてはいかがでしょうか。ただし全ての整形外科クリニックでこの処置を行っているわけではありませんのでご了承ください。

当院にもお気軽にご相談ください。

謎多き腰部痛 仙腸関節痛について リハビリ勉強会⑦

2022.03.11

こんにちは、院長の筒井です。

3月に入り少しずつ暖かい日も増えてきていて過ごしやすくなってきました。私は花粉症ではないので大丈夫ですが、花粉症のあるスタッフはきついようで目や鼻にきています。そんな姿をみているといつ自分も花粉症になるかもしれないと思い心配です。スタッフは漢方で対応しており、個人差はありますが小青竜湯が効くみたいですね。少しでも生活が楽になればと思います。

さて、この度は謎多き腰部痛の原因の一つである仙腸関節痛に対してリハビリ勉強会を行いました。

仙腸関節とは骨盤の関節で、仙骨と腸骨の間の関節になります。以前腰痛は8割程度が非特異性(原因がわからない)と言われていましたが、最近は研究なども進み腰痛に対して原因が解明されてきています。その中の原因の一つが仙腸関節痛です。

仙腸関節痛にも原因は多様ですが、多くは骨折や変形などの構造破綻ではなく、機能障害が原因と言われています。『仙腸関節に微小なずれが生じて機能障害が起こると、その周囲の組織、殊に後方の靭帯が過緊張になる。結果、靭帯やその周辺組織に分布する知覚神経終末や侵害受容器が刺激されて、疼痛が発生する』と考えられています。(「診断のつかない腰痛 仙腸関節の痛み」 より引用)

症状の多くは、腰部から殿部痛ですが、時にはふくらはぎや踵部なども仙腸関節障害が原因であることもあり、多彩な部位に症状が出現します。

その他特徴的な症状誘発動作としては

①仰臥位に寝ると痛い

②椅子に腰かける座位で痛い

③患側を下にした側臥位で痛い

などの症状があると仙腸関節痛を疑います。

診断はワンフィンガーテストといって痛い部分を人差し指で指さしてもらったときに上後腸骨棘という部分に指が向かうこと(下記の写真)、仙腸関節部にブロック注射したときに疼痛が軽快することなどで診断します。

レントゲンやMRIなどの画像検査では異常を示さないことから、見逃されることも多く、なかなか改善しないこともあります。もし同様の症状がある場合は近隣の整形外科でご相談してみてはいかがでしょうか?少しでも症状を改善させることが出来るかもしれません。

日本医師会認定健康スポーツ医

2022.02.19

こんにちは、院長の筒井です。

以前ブログで記載しましたが、研修を受けたことで日本医師会認定健康スポーツ医の資格を取得しました。今後も自分に必要な資格は取得していき、さらに知識・技術を身に着けていこうと思います。

常に進歩していくことを意識して、こつこつと1に努力、2に努力、3にも努力の気持ちです!

健康スポーツ医とは

『地域社会において運動への関心が高まってきていることや、特定健診後の保健指導における運動指導が重要であることから、運動を行う人に対して医学的診療のみならず 、メディカルチェック、運動処方を行い、さらに各種運動指導者等に指導助言を行い得る医師として日本医師会が養成した医師』

引用:日本医師会認定健康スポーツ医 http://nintei.med.or.jp/sportsdoctor/outline/

リハビリ勉強会⑥ 変形性股関節症

2022.02.16

こんにちは、院長の筒井です。

まだまだコロナウイルスが猛威を振るっており、身近な施設などでも感染の話を耳にすることが多くなってきました。いつ自分が感染してもおかしくない状況だと感じる日々ですが、よりいっそう標準的な感染対策を怠らず、自分の身は自分で守るという気持ちです。皆さんもお体にお気を付けください。

さて、そんななかでもクリニックとしてのレベルアップは怠らず、勉強会は引き続き行っています。今回は変形性股関節症についての勉強会を行いました。簡単にまとめておきます。

変形性股関節症は変形性膝関節症に比べて有病率は低いです。ちなみに膝関節の有病率は40歳以上で男性42.6%、女性62.4%に比べて股関節の有病率は1.0-4.3%と言われています。確かに診療を行っていてもそのくらいの比率だと感じます。

原因の80%が発育性股関節形成不全(DDH)と言われています。DDHとは子供のころの股関節脱臼や骨盤の臼蓋という受け皿の役割をしている部分が浅かったりするために将来的に変形性股関節症に移行していきます。

乳児期

発育性股関節形成不全

成人後変形性股関節症への移行経過

変形性股関節症のレントゲン写真

治療は、疼痛のコントロールとしての内服薬や股関節周囲の安定性向上のため筋力トレーニングを行います。それでも症状改善なく、股関節の可動域低下(靴下を股関節を曲げてはけない、あぐらをかけないなど)や歩行時の股関節痛が持続する場合は手術療法を検討します。

手術療法としては、年齢や状況に応じて、関節温存手術や人工関節置換術が行われることが多いです。

上記の症状や変形があったとしても変形性股関節症以外の疾患の可能性もあるので、近くの整形外科を受診し治療方針をご相談することをお勧めします。

引用:日本整形外科学会ホームページ、KYOCERAホームページ

クリニック改善にむけて 患者様アンケート

2022.01.20

こんにちは、院長の筒井です。

より良いクリニックにむけて患者様のアンケートを開始しました。

困ったことや改善点などあればアンケートに記載していただければ、今後のクリニックに反映していきます。

また嬉しかったことや良かったことなどの感想も大歓迎です。スタッフ一同そのようなお声を励みに日々診療を頑張っていこうと思います。

お時間があれば是非ご協力よろしくお願いいたします。

院内にも診察室前、リハビリ室への廊下、精算機の所に貼っていますので、お気軽に行って頂ければと思います。

リハビリ勉強会⑤

2022.01.18

こんにちは、院長の筒井です。

正月気分も抜け、日々勉強、日々精進という気持ちでばりばり頑張っています。

去年から始めていた理学療法士とのリハビリ勉強会もなんとか継続しています。今年一回目は整形疾患で症例の多い椎間板ヘルニアについて勉強会を行いました。

ちなみにですが、

よく『ヘルニア』という言葉を聞くことはあると思いますが、『ヘルニア』という言葉はラテン語の「飛び出る」という意味から来ており、『ヘルニア』自体は物というより、飛び出す動作を指しているようなものです。なので、例えば〈でべそ〉はへそ(臍)が飛び出たもので臍ヘルニアといいます。

以上のことより、一言でヘルニアと言ってもどこのヘルニアなの?なんのヘルニアなの?ということになります。整形疾患でよく言われるヘルニアは腰や首にある椎間板という背骨のなかのクッションの役割をしているものが飛び出た状態を椎間板ヘルニアと呼んでいます。下の画像はMRIで腰の部分をみています。正常画像と比較すると椎間板が飛び出ています。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: image.png

勉強会では豆知識だけではなくその他治療や病態なども考え検討しました。

今後も継続していこうと思います。

あけましておめでとうございます。

2022.01.12

少し遅くなりましたがあけましておめでとうございます。院長の筒井です。

年末年始はいかがお過ごしだったでしょうか。自分としては待ち遠しかったお正月でしたが、来てしまえばあっという間に過ぎてしまい、もう少しのんびりだらだらしたかったかなという感じでした。

気を引き締めて今年も1年当院の経営理念『全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、地域患者の幸福に貢献する』を胸に患者様はもちろん、スタッフも含めて当院に係る全ての方の幸福のために頑張っていこうと思います。

上の写真は毎月行っている全体ミーティングの写真です。日々の問題点・改善点を全員で共有し、より良いクリニックになるよう努力しています。

年末大掃除

2021.12.29

こんにちは、院長の筒井です。12月29日より1月3日まで休診とさせて頂いています。

本日29日の午前中はスタッフ一同クリニックの大掃除をしました。受診される患者様にとっては不快のない綺麗なクリニックである方がよいのはもちろん、私たちスタッフも気持ちよく働けるように行いました。

あいにくの雨でしたが、小降りなときを狙って窓の外側も洗いました。某有名メーカーの高圧洗浄器を使用していますが、めちゃくちゃ汚れが落ちるので気持ちよかったです。

今年も色々と大変な1年でしたが、来年もスタッフと共に整形外科クリニックとして更なる前進を図っていこうと思います。来年もどうぞよろしくお願いいたします。

最後に年明けの準備もしましたので少し載せておきます。

休日当番医の1日(2021/12/26)

2021.12.26

こんにちは、院長の筒井です。

年末になり、本日は雪が降るほど寒くなってきました。

そんな年末最後の日曜日の今日は休日当番医でした。いつもは忙しいことが多いですが、本日は急患も少なく落ち着いた当番医でした。上の写真は診療中のがらんとした駐車場です。平日の忙しさと比べるとさびしい感じですが、皆様も家でゆっくりされていたのでしょうか。ケガが少ない良い日であったと思います。

自分も溜まっていた仕事を終わらせることが出来、少しすっきりです。

残すところ今年の診療も27.28日と2日間になりました。年末・正月休みが気になるところですが、気を緩めずに頑張ります!

四十肩・五十肩の新しい治療法

2021.12.12

こんにちは、院長の筒井です。

最近四十肩、五十肩と言われる肩関節周囲炎の患者様が多く来院され、「長年挙がらなかった肩が挙がるようになって良かった」と治療に満足してくださる方が増えているように思います。自分も日々研鑽を積み少しでもより良い治療を行えればと思い努力しているところです。

そこで今回は『サイレントマニピュレーション』という新しい治療法とそれによって整形外科的にも積極的な治療を行うようになってきている四十肩、五十肩への現状について書いてみようと思います。

多くの患者様が長い間肩の痛みを抱えながらも受診せず我慢して我慢してから治らず受診されます。話を聞くと五十肩と考えて自然と治ると聞いていたので我慢していたとのこと。確かに自然と治ることもある疾患であることは事実です。しかし治るにしても1カ月で治る人もいれば、半年かかる人もおり、場合によっては数年たってやっと治ったという人もいます。そして場合によっては我慢し続けても治らないという人もいます。

なぜ、このような現状になってしまっているかというと、今までの治療法として痛みに対して鎮痛薬や湿布などの保存的な対症療法で自然寛解を待つか手術的な治療法しか選択枝がなく、患者様も自然に治る可能性があるのなら保存的に経過をみてみるとなってしまっていたからです。

しかし、最近この病気の病態が解明されてきており、それにより手術ではない積極的な保存的治療の一つとしてサイレントマニピュレーションが開発されました。どのような治療法かというと、簡単にいうと炎症を起こして硬くなって伸びなくなってしまった関節包を手術をせずに外的に力を加えて切るといういうものです。

肩の関節の中には以下の図の様に関節包という組織があり、これがあるために肩関節は脱臼せずに十分な可動域を保つことができます。しかし、なんらかのきっかけでこの関節包に炎症が起こり、そのため痛くて寝れない、動かせないという時期が発生し、痛みが少し落ち着いた時には、関節包が拘縮を起こして腕が挙がらないという状態になってしまいます。

正常な肩関節

この拘縮を起こしてしまった状態に対して行うのがサイレントマニピュレーションです。先ほど述べたように外的に力を加えて切るのですが、ただでさえ動かすのが痛い部位に力を加えては痛いだろうと思われると思います。そのために術前にブロック麻酔をかけ、肩の部分の痛みを感じない状態にしてから行います。麻酔が十分にかかった後は徒手的に関節の可動域を広げていき、それに伴って関節包が徐々に伸びていきピリピリと少しずつ切れていきます。そうして全方向的に切離出来れば関節可動域は格段に改善します。その後は理学療法士によるリハビリが大事で、再度固まらないようにすることと、更なる関節可動閾の拡大を目指して行っていきます。

もちろんこの治療にも合併症やリスクなどはあり、適応患者選択や治療時は慎重に行いますが、この治療法により得られるメリットは多く、私自身この治療法を習得して治療できる幅はかなり広がり、入院せずに外来で行うことが出来るとても良い治療法だと思います。

自然と治るかもしれない四十肩・五十肩ですが、いつ治るかも分からず、治らないかもしれない、治ったとしても半年以上我慢しなければいけないのであれば、早期から積極的に治療していく方が良いのではないかと考えます。

様々な治療法がありますし、五十肩と思っていても違う疾患の可能性もありますので、自己判断で放置せずに一度近くの整形外科を受診することをお勧めします。